森美術館に新アートスペース 東京カルチャー発信の「平成展」(日経トレンディネット)



10/6(土) 8:00配信

日経トレンディネット

 森ビルは2018年8月31日、六本木ヒルズ展望台 東京シティビューに新たなアートスペース「東京カルチャーリサーチ」をオープンした。変化し続ける東京のカルチャーシーンを発見・研究し、紹介することを目的に同社が新設した。時代に注目した展示をとおして、「ジャパニーズポップ」の魅力を発信するのが狙いだ。

【関連画像】演出、美術を担うアーティスト・たかくらかずきによるVR作品は自由に体験できる。体験者の見ている景色が会場スクリーンに映し出される仕組み

 初となる展示は、平成元年である1989年から1999年の平成初期10年を切り取る「平成展 1989-1999」。会期は2018年10月31日までで、ポップポータルメディア「KAI-YOU.net」を運営するカイユウと共催する。「平成展」を三連展として、平成を10年間ずつ区切り全3回の開催を予定するほか、「東京の文化的特異点」を感じる作品を不定期で展示していく。

 東京カルチャーリサーチは、六本木ヒルズ森タワー52階のカフェ「THE SUN & THE MOON」内の約17平方メートルのコンパクトな空間だ。入場料は無料で、展望台・森美術館の入館料のみで入場できる。特にマンガ、ゲーム、アニメなどを深く掘り下げ、東京シティビューとしての独自リサーチとセレクションに基づき不定期で展示する。カイユウ代表 米村智水氏と森ビル東京シティビュー企画担当の風間美希氏は同世代で、ミレニアル世代ど真ん中。ポップカルチャーに特化したメディアであるKAI-YOU編集部が手がける異色の展示だ。風間氏は「オールジャンルで『ポップ』を追求するカイユウと、商業的な大きな展示とは異なる形で、東京にうずまく“面白いもの”を紹介する場を作りたかった」と説明する。

存在感を放つVR作品

 前述の平成展は、30年間の平成の終わりに、10年という節目ごとのカルチャーを鑑賞者自身の記憶と共に振り返るのがコンセプト。米村氏は「80年代にはサブカルチャーとして語られたアニメや漫画も、平成初期にはポップとして許容されていきます。既存の価値観が失墜する中で育まれたポップカルチャーは、終わろうとする平成の歴史から、今後どのように次世代へ繋がるのか、新たなカルチャーの始まりへのカウントダウンとしたい」と語る。

 第1回となる「平成展 1989-1999」では、平成初期に重要な位置付けとなった流行モノ20点とVR作品を展示。平成初期のポップカルチャーを、「1000年後にも残るもの」という基準で2000以上の候補の中から厳選し、カイユウの独自の視点で、人や作品を恣意的、主観的に並べ、解説する。

 会場内で存在感を放つのは、アーティスト・たかくらかずきによるVR作品だ。最新のVRはリアルに立体を感じられるものが多いが、この作品はあえて仮想の身体を持たず、幽体として漂う「情報」になることを意識して作られた。「スマブラ」を連想させるグラデーションが施された空の背景や、ひぐらしの鳴き声など、平成初期独特の不安感をあおる「エモい」演出と連動させ、VR内に配置された21のオブジェクトに近づくとKAI-YOU.netの編集者たちの解説が聞こえてくる。会場内の博物館的な解説と比較すると、ここで流れる声は批評的で、よりKAI-YOUの主観が含まれた解説となっているそう。

 風間氏は「ジャパニーズポップというキーワードをもとに、時代に注目した展示を発信したい」と今後の展開にも意欲的だ。「東京カルチャーリサーチ」は、この「平成展」ありきで新設されたという。

 続く「平成展 2000-2010」は2018年12月1日から2019年1月31日、「平成展 2011-2019」は2019年3月1日から2019年4月30日に開催予定。懐かしさを巡る回顧展ではなく、終わりゆく平成を通して未来のポップカルチャーを探る本展は、広い世代の心に刺さり、それぞれ異なる感想を抱くだろう。新たな森美術館の「視点」から発信されるメッセージは、小スペースながら強い熱量が感じられた。

(文/小西 麗)

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