カンヌ映画祭 是枝監督の最高賞、邦画に復活の兆し(日経トレンディネット)



是枝裕和監督『万引き家族』のパルムドール受賞で盛り上がったカンヌ映画祭。会場で取材したジャーナリストの高野裕子氏に、今年の現地の様子をレポートしていただいた。※文中敬称略

【関連画像】今年は女性審査員が5人も。左からクリスティン・スチュワート、エイヴァ・デュヴァーネイ、ケイト・ブランシェット、レア・セドゥ、カージャ・ニン(C)Festival de Cannes/Mathilde Petit/FDC

 邦画としては21年ぶりとなる、是枝裕和監督の『万引き家族』が最高賞であるパルムドールを受賞――のうれしいニュースで幕が下りた2018年のカンヌ映画祭。邦画の上映数は例年と変わらないが、どの映画も高い評価を得ており、日本の映画が小さいながらも世界に一石を投じたのではないか、という希望が見えた年だった。

 「これをいただくというのは、監督として本当に重い出来事で、この先この賞をもらった監督として恥ずかしくない作品をまたつくらなければならないという覚悟を新たにしています」と受賞の感想を語った是枝監督。

 作品については、「公式上映のときの観客の反応も温かいものだったんですけど、その後の記者の方たちも言葉の中に、“TOUCH”と“LOVE”という言葉があふれていて、ちゃんと届けたいところに(作品が)届いたのかなという想いです。血縁を越えて共同体を求める人たちの話で、産んでいないが親になろうとする人たちの試みを応援するという気持ちを込めました。彼らは犯罪でつながっていて、そのせいで引き裂かれるので、見てる側としては単純なシンパシーでも単純な断罪でもない、両方を抱えながら見終える――そういうポジションに僕自身を置いて撮った映画ではあります」と話した。

東京芸大・映像研究科の成果が出始めた

 カンヌ初エントリーで、いきなりコンペ部門にノミネートされたのは濱口竜介監督だ。

 濱口の作品『寝ても覚めても』は、柴崎友香の同名小説が原作。同じ顔をしているが性格の異なる2人の男性(東出昌大が一人二役)に恋をした主人公・朝子(唐田えりか)の揺れ動く心を、独特の手法で描いた。さりげないが計算しつくされた自然な演技、大胆な撮影方法など、辛口の評論家をうならせ、50年代から60年代の映画運動「ヌーヴェルヴァーグ」の再来とまで評価された。濱口監督は、東大文学部を卒業し、テレビの仕事を経験。その後、東京芸術大学の映像研究科の門をくぐった。東日本大震災のドキュメンタリーを制作したことが、彼の監督としての表現方法に大きく影響したと語る。

 主人公の相手役を演じる東出は公式上映に感激した様子。「2000人の会場で自分の出演映画が上映されたのは初めてで、天井を見てその広さに驚きました。さすがカンヌだと思いました。上映後2階席から身を乗り出して拍手してくれた人がいたんです。映画の思いが届いたんだと思い、その人たちへの感謝をフランス語でメルシーと言いました」と興奮気味に話した。

 短編部門のコンペに2度目のノミネートを果たしたのは、濱口監督の出身である東京芸術大学映像研究科、メディア映像教授・佐藤雅彦が率いる「c-project」(豊田真之、関友太郎、平瀬謙太朗)が、川村元気とコラボした『どちらを選んだかは分からないが、どちらかを選んだことははっきりしている』だ。c-projectのcはカンヌのc。「つくり方を作る」をモットーに、カンヌ映画祭の上映に値するような映画づくりを目指す。

 4年前には『八芳園』が短編部門でコンペ入り。新作は若手プロデューサーとして活躍する川村が加わり、黒木華と柳楽優弥をキャストに迎え、数学的概念である双対性をドラマ化した。

 「東京芸大は美術学部と音楽学部がある。ところが世界で生まれている大部分の表現は映像、それで映像研究科というのを13年前に作ったんです。今年カンヌに長編と短編の両方で映像研究科がからんでいる。ちょうど成果が出はじめているんじゃないかと思うんです」と佐藤教授は語った。

 また、監督週間では細田守監督の『未来のミライ』がノミネートされ、監督と上白石萌歌がカンヌ入りした。この部門でアニメが上映されることはまれ。作品の質の高さが認められた結果だ。

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